SNSの発達によって現在、出版業界は育児漫画百花繚乱です。

 

 

出産を機にインスタやtwitter、ブログでイラスト、4コマなど

育児漫画を記録する人が増え、それが同じ育児中のママたちの間でヒット。

ママ向けキュレーションサイトで連載コラムをするようになったり

次々と出版される運びになっています。

本屋の育児本コーナーに行くと帯に「インスタフォロワー〇万人!」

「twitterで大人気!」などの文字が躍っています。

 

私も特に育休中のときは暇だし子供中心の生活なので、こういった

育児漫画をSNSで読み漁りました。よく読んでいた人はやっぱりその後

人気が出て本が出るまでになっています。

元々イラストやマンガ関係の仕事をしていた人もいれば、絵は全くの素人という

人もいますが、私の好きな傾向としては絵は上手さよりも味やクセ。

お話も「うちの子カワイーでしょ」「子育てってほんとにシアワセ☆」という

類ではなく、ちょっとシニカルだったり子供のおかしさとか不思議さ、

あと母親になったことへの戸惑いや自虐がほどよく入っているものが好きです。

ヒットしているものはそういうのが多いと思います。

ほんとに赤ちゃんを育てながら時間を工面して、毎日のようにイラストや

漫画をアップするそのマメさには脱帽ですし、これだけ面白いものを

描ける人たちが今まで特に目立ちもせず埋もれていたことにびっくりです。

見ていると特に開花するのは、元々プロっぽい人よりも趣味で描いていた

くらいの素人っぽい人。

ポテンシャルを持っていた素人が、「出産・育児・子育て」という

最高のネタを得て一気に目覚めたという感じ。

 

 

一方で育児漫画ってすっごい一瞬の輝きというか、母親というのは現金なもので

自分の子供と同じころの漫画にしか興味ないんですよね。

すでに私も0〜2歳の子を描いた漫画は「懐かしいな〜あるある」とは

思いますが積極的に読もうとは思わなくなっています。

好きな作者の人のでも、自分に第二子がいないので第二子の話には関心がないです。

さらに、子供が大体みんな一緒なのはせいぜい未就学の頃までで

段々とその子自体の性格や能力に差がついてきます。

赤ちゃんの頃は女の子でも男の子でもやること一緒ですが、年少になるころには

男女ではっきり差がつきますし、大体3グループくらいに分かれるといいます。

「いい子」「悪い子」「普通の子」

あくまで表層的な分類ですけど、やんちゃで手のかかる子の

親は大人しすぎて逆に心配の子の話は参考にならないし共感もしません。

さらに小学校になると歴然と「能力の差」が出てくると思うんですよね。

そうなってくるともうこれまでみたいなたくさんの共感は得られなくなってきます。

育児漫画の寿命は短いのです。

さすがにいつまでも自分の子が赤ちゃんの頃を思い出して描き続けるわけには

いきませんから、だんだんとネタも需要も尽きてくるのです。

 

せっかくこんなにかわいい絵やおもしろいお話が描ける人たちが。

そこで私の提案です。子供が大きくなって描くことがなくなったら

ぜひ「介護漫画」に移行してほしい!

今40前後の育児漫画家があと10年以内には介護問題が身近になってきます。

老人たちも赤ちゃんに比べれば個体差はありますが、「老人あるある」というのが

あるはずです。

「こうすればゆるいウンチも漏れない!」みたいなお役立ちネタも育児漫画には

ありますけど、「こうすれば義父のオムツも替えやすい!」みたいに

置き換えられます。

さらに育児と介護に共通しているのは「つらみ」というところです。

育児漫画もなぜたくさんの共感を得るかというとやはり「つらいこともいっぱいある」

からなのです。

辛さの共有。

介護にもそれが言えます。さらに得意のデフォルメで老人たちを面白可愛く描けば

いいのです。

そうすると子供のいる人だけではなくほぼすべての人がターゲットになるわけですから

市場は何倍にもなります。

私も読みます。

 

 

最後にもう一点。

最近すごく増えている「ネットから火が付いた」ものをすぐに出版したりプロの世界に

引き込もうとすること。つまりギャランティーを発生させることに、複雑な気持ちもあります。

というのは、大好きだった素人がお金をもらうようになって面白くなったことが

ほとんどないからです。

人間、お金をもらう前と後で同じことをやり続けることは難しいのです。

個人のブログでやってた頃はおもしろかったのに、コラム連載になってから内容

薄くなったなーということは多々あります。

かといっていいものをタダに近い形で提供し続けろというオリエンタルランドみたいな

発想はよくないのですが。報酬はあげたいけど、あげるとつまらなくなってしまう皮肉。

あと実際にネット出身の出版物を手にしてみたときに感じる独特の

「これ以上でもこれ以下でもない」感がありますね。

私も興味につられて何冊か手にしましたが、どれもあっという間に読めてすぐ売りたくなる。

面白くないわけではないのですが、ネットの中にあったものはネットの中にあった方が

いいという感想です。

ネットの中に留まらないものを作ってた人がネットで周知されるというのならいいのでしょうが。

そして何より「本物を作り出す」ことよりも手っ取り早く売れるネット畑のものを

使い捨てていこうとする出版業界が一番イラっとしますね。

 

 

 

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