岡崎京子の『リバーズ・エッジ』が映画化です。
二階堂ふみや吉沢亮などといった今旬の具材を使っていますが
ところどころCHARAの娘SUMIREをちょい出ししてみたり
なんといっても小沢健二による映画テーマ曲を使ったりと
90年代の味付けも忘れていません。
でも、もう忘れていいと思います、90年代の味付け。
古いものは古いままでちゃんと新しいから、無理にインスタ映え
メニューにリニューアルしなくていいです。
岡崎京子さんの漫画は当時、ちょっとサブカルかじってるなら
読んでおかないと!ということで一通り読みましたが、全部
ブックオフです。ブックオフで揃わない岡崎京子はないでしょう。
それくらいやっぱり、合わない人は合わないマンガでした。
都会的過ぎたんですね私には。夜の繁華街で叫び笑いながら泣いたり
する感覚は私にはなかったようです。
それで小沢健二の新曲『アルペジオ』を聴いてみたんですけどね。
これはなかなか、気取りのなくなったつかみどころのある曲だなと
思いました。メロディも何度も聴きたくなる明るくてちょっと切ない感じです。
意外だなと思ったのは、フリッパーズギターやウキウキ期のオザケンの
持つ「オシャレでアーバンだけどほんとのことは何も言えてなくて空虚」
っていう感じの方が『リバーズ・エッジ』のテーマには合っている気がするんですけどね。
『アルペジオ』はなんというか、ちょっと丸くなって昔の失敗談とか
酒の席でしてしまうおじさんになったオザケンという感じです。
例えばこんな歌詞です。
「消費する僕」と「消費される僕」
このころの僕は弱いから 手を握って 友よ
汚れた川は再生の海へと届く
本当の心は本当の心へと届く
空虚な90年代(実際は現在の方がよっぽど空虚なのですが)を駆け抜けた
懐古と一度は失った自信なども感じさせます。
昔だったら青山や麻布で声もかけられない存在だったのに、新小岩で
飲むこともあるんだ??みたいな印象です。
伝わりづらいでしょうか。親しみやすい曲ということです。
ほうほうと思って聴いていると、お得意の「語り」が入ってきました。
また神様がいると思ったりするのかと思いきや、予想外の歌詞が続きました。
僕の彼女は君を嫌う
君からのファックス隠す 雑誌記事も捨てる
その彼女は僕の古い友と結婚し子供産み育て離婚したとか聞く
ふぁ!?
当時のフリッパーズギター界隈を少しでも知っている人なら
あのことかな?とすぐに気がつきますね。
実際どの彼女のことを言っているのかわかりませんが、あの子猫ちゃん、
あの台湾親善大使、あのファンシーフェイスグルービーネーム…?
私は渡辺満里奈以外の、彼らを取り巻いていた女性たちが好きなので
この語り部分を聴いてかなりイラっときました。
結局は元カノのことを寝惚けたまま懐かしんでる往生際の悪いおじさんの
歌じゃないですか。
彼らの中では、関わってきた女性たちは若くて綺麗なお人形のまま。
それは裏を返せば、生身の人間としての女性たちを受け止めることが
できなかった(これからもするつもりはない)ということです。
それを後悔している風でもなく、未だに男たちは当時と同じ地平を
歩いているのです。
それに比べて女たちのたくましいこと。
嶺川貴子はシングルマザーとなり、深津絵里は女優の道をひた進み、
カヒミカリィは出産し会陰マッサージオイルを開発し、
渡辺満里奈は朝の健康番組で尿漏れの話とかしている。
(あれ?渡辺満里奈意外といいかも)
会陰が裂けたり、妊娠線ができたり、尿もれもするようになる
女性の人生を受け止める気のない夢見がち中年男の歌ですが
メロディは好きですし、オザケンらしいといえばオザケンらしいです。
いやー俺もすっかりダメになったよ、なんて弱音を吐くふりして
まったく精神は若い頃と変わっていない中年男性の言うことは
寝言だと思って聞き流しましょう。
終わったからこそ夢のままでポワンとし続けるんでしょうか。
今の奥様とはどんなかんじなんだろう・・・とかちょっと思いました。
高校生の頃は好きでしたが今はちょっと苦手ですオザケン(私の周りは支持者多いので言わないですが)